自動車純正スピーカーを社外品に交換するのはオススメできない理由:段ボールスピーカーで TS-F1040S(社外品)とP1000K (家庭用)の周波数特性比較
軽自動車を初めて購入した。普通乗用車から乗り換えるとその貧弱なオーディオサウンドに驚いた。低音がスカスカで、音量を上げると容易に音割れを起こす。ネットで調べてみると10cmのフルレンジスピーカーなので仕方がないという論調になっているが、果たしてそうでしょうか?家庭用オーディオではBOSE 121などの11.5cmのフルレンジスピーカーでもしっかりバランスのとれた素晴らしい音楽再生能力があることは知られています。工夫次第でなんとか改善できないものか?
そこで、音割れ防止にスピーカー周りのデッドニングを、音場の改善を期待してトゥイーターを耳の高さにあげるため、2ウェイスピーカーに換装することにしました。5台目の自家用車にして初めて純正スピーカーを社外品に交換してしまった。果たしてその効果は・・・
結論からいうと、家庭用オーディオスピーカーをリアスピーカーとして車載するのが一番コスパの良いオススメ。
カロッツェリア(パイオニア) 10cmセパレート2ウェイスピーカー TS-F1040S
TS-F1040S の換装とデッドニング

オートバックスで 、カロッツェリア(パイオニア) 10cmセパレート2ウェイスピーカー TS-F1040S を購入。さらにデッドニングも同時に施行してもらうためaudio-technica AT7405 AquieT ドアチューニングキットも購入し、スピーカーユニットの換装をしてもらった。


助手席側、純正スピーカーを外し、アルミとブチルゴムの制振材を貼付。スピーカー裏には防音材を貼付。矢印はスピーカーユニットの取付ネジ穴。上下に2か所あります。

運転席側のスピーカーユニット換装後、スピーカー周りに吸音材を貼付。吸音材の隙間にみえるウーファーユニットの網模様は、振動板がカーボン素材である証であり、高音質を期待させる。
セパレート2ウェイスピーカーではネットワーク配線を間違えると低音(ウーファー)が再生されない
いざ音楽を再生してみると・・・なぜか、低音が全く出なくなった!!デッドニングの効果なのか、大音量での音割れとビビリ音は改善したものの低音がスカスカ。さらに期待していた高音も質の良いものでなく、中高音の厚みも薄くなってしまった。ネット上では純正品とほとんど差がないという意見と、良くなった(気がする)という意見とに評価が2分されており、少しピュアオーディオをかじった自分としては前者の判断。中高音に関してはフルレンジから2ウェイにかえてむしろ悪くなったと思う。
低音が本当に再生されていないか確認するため、周波数サンプルの再生テストをしてみたところ80Hz以下では全く再生されていないことが分かった。耳をウーハー側に近づけても音が再生されていないことから、低音が全くでなくなったなのは、明らかに配線ミスではないかと疑い、装着してくれたオートバックスに再度持ち込み、配線を確認してもらったが問題ないとの返答。
片方のウーハーから音が出ないなら初期不良が考えられるが、左右とも出ないのは配線の問題と強く疑い、ネットで調べて初めて自分でコンソールを分解してみた。
ナビを外してみると、車内配線のハーネスからツイーターとウーハーに分岐するネットワーク配線がつながれており、これを左右とも外し、直接、ウーハーと車内配線を繋いでみたところ・・・
ウーハーから音が出ました!!!なんと、ネットワーク配線ミスが原因でした!!

取扱説明書を調べてみたところ、車内配線とネットワークをつなぐには上図の赤枠で囲まれた15cmの端子変換コードを間に挟む必要がある。ところが、誤ってウーファーとネットワークの間に15cmの端子変換コードが挿入されており音が全く再生されなかったようだ。
これでも一応、トゥイーターだけは音が出るんですね・・・
TS-F1040Sのトゥイーターユニットの高域の音質は?
さてやっとのことでウーファーユニットから音が再生されるようになり、じっくりと音楽を鑑賞してみることに・・・
Fシリーズは、上位モデルから受け継いだ独自のノウハウや技術を活かし、
明快で実体感のある音楽性を実現。
さらに、エントリーモデルでありながら、「ハイレゾ音源」再生に対応。
低域から超高域まで情報量豊かな音を余さず描き出します。またセパレートタイプならではの明確な定位とリアルな音場感をクルマの中に再現。
TS-F1740S/TS-F1640S/TS-F1040S特長 Pioneer カーナビ オフィシャルサイト
純正スピーカーからの交換で、車室内を高音質かつ臨場感あふれるサウンドで満たします。
上記のようにオフィシャルサイトには記載があり、10,000円を超える価格からも音質の改善に期待が高まります。
しかし低音が再生されないのは改善されたが、やはり純正に比べ音のバランスがとても悪く硬質な音でした(いわゆるドンシャリ)。そのため女性ヴォーカルや弦楽器などの中域の繊細さが物足りなく感じました。
また高域の音質改善のために導入したトゥイーターユニットの方は、 周波数サンプルの再生テストではかなり高音まで再生されるもののノイズもかなり乗っており、またそのスペクトラムもフラットな感じではなく山と谷がかなり大きく、その音質はお世辞にも良いものといえませんでした。
またウーファーユニットでは高域をほとんど再生していないため、高域では音の厚みと音場が不足している印象です。
そこで同サイズのフルレンジスピーカーであるFOSTEX P 1000Kと音の出方の違いを、「音の周波数スペクトラム」を使用して、視覚的に違いを検討してみた。
FOSTEX P1000Kとの比較
FOSTEX P1000K をネットで購入

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さて車載する前に、TS-F1040S のウーファーユニットと音質の比較をしてみることに。そこで、自宅でも聴けるよう簡易スピーカーを自作することにした。
100均段ボールスピーカー作成
ダイソーで、スピーカーの筐体になりそうな段ボールを購入。

スピーカーのコーンの径に合わせて錐で穴をあけていく。

スピーカーを段ボールに固定するためのネジとナットを100均にて購入。

段ボールなので固定したい場所にネジで直接穴をあけていく。写真はFOSTEX P 1000K。

スピーカーケーブルは適当に端子の穴に引っかけてつないだ。写真の赤いマーキングがある端子が+側です。

お手軽100均段ボールスピーカーの完成!!

こちらはカロッツェリア TS-F1040Sを固定したところ。
周波数特性グラフ比較(TS-F1040S ウーファー vs P1000K)
TS-F1040S と P1000K のスペックを比較すると・・・

スペック上の再生音域の広さではTS-F1040Sの圧勝である。高域はトゥイーターユニットの性能が含まれているのでウーファーユニットとしての性能は不明なものの、低域は42Hzの重低音から再生されることになっている。
音の良し悪しは、主観的な判断も入ることから、客観的に判断できるよう定量的に周波数特性を測定し比較することにしました。

今回使用したアプリは、Google Playからダウンロードした『Spectroid』。

Carozzeria TS-F1040S ウーファーユニットのスペクトラム。赤線グラフが再生周波数と音量を表しています。200-400Hzにピークがあり、その後急速に低下後、650Hzに2番めのピークがきたあとなだらかに低下しており、バイパス回路関係なく、もともと中高音の出ないスピーカーであることが分かる。高音はトゥイーターユニットに任せれば良いということなのでしょうか。低音再生は56Hz(写真青字)からなだらかに立ち上がっていた。

FOSTEX P1000Kのスペクトラム。赤線グラフをみると、高音は7,000Hzあたりから急速に低下している。中高音がほぼフラットに均等に出力され、これがヴォーカルやヴァイオリンなどの艶のある再生につながっているようだ。また低音再は41Hz(写真緑字)から急峻に立ち上がっており、TS1040S よりも低音再生能力が若干高いことが分かる。
車載用スピーカーは過酷な環境での使用が想定されており、音質より耐久性重視なのだと思います。そのため廉価な家庭用スピーカーユニットでも音質では勝るとも劣らない結果となりました。
今回の比較試験の限界は、段ボールスピーカーを使用したことで、段ボールの共振周波数の影響が結果にどの程度影響したかが不明であることです。
結論
純正スピーカー(フルレンジ)を社外品の2ウェイスピーカーに交換することは、
・2ウェイスピーカーにすると再生音のバランスが崩れる恐れがある。また肝心のトゥイーターユニットの性能がお世辞にも良いとはいえない。
・スピーカーの筐体が車体の金属であるという悪条件では、スピーカーユニットの交換だけでは効果が実感できない。
・価格設定が性能に比し高額である。
以上のことから、個人的には全くオススメできない! ということになりました。
結論からいうと、家庭用オーディオスピーカーをリアスピーカーとして車載する(関連記事:家庭用オーディオスピーカーをリアスピーカーとして車載してみた)のが一番コスパの良いオススメ。
どうしても交換したいのなら、2,000 円前後で手に入る家庭用フルレンジスピーカーユニットを試してみる方が良いだろう(関連記事:ジムニー<JB23W>に家庭用スピーカーユニット FOSTEX P1000K を取り付けてみた。)